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地球生命圏研究機構

SELIS セミナー

日時

2012年10月22日(月) 16:30~18:00

場所

環境総合館 5階、教室516   

講演者

           中川弥智子(名古屋大学大学院農学研究科 准教授)

講演内容

「 東南アジア熱帯雨林における一斉開花:

分かったことと今後の展開

  不定期な間隔で起こる群集レベルでの同調した開花・結実(一斉開花)は、東南アジア熱帯雨林に特有な現象として多くの研究者の注目を集めており、特にその至近要因や究極要因に関する調査研究が進められてきた。そこで、本研究の調査地(マレーシア・サラワク州・ランビルヒルズ国立公園)に関わる研究者グループの20年間にわたる成果を簡潔にまとめながら、今後の展開について発表する。

   至近要因の気象トリガーとしては、これまで有力と考えられていた低温ではなく、短期間の乾燥(30日間の積算雨量で40mmを下回る乾燥)が一斉開花の有力な開花刺激であることを見出した。また、土壌養分の少ない熱帯雨林では開花・結実に資源の蓄積が必要であることが指摘されてきたが、炭素や窒素ではなくリンの蓄積が開花に重要であることも明らかになった。さらに、究極要因としては、同調した開花や結実による送粉効率の向上や種子・実生食害者への飽食効果を通して、樹木の繁殖成功が高まることが分かった。一方で、長期フェノロジー観察より、一斉開花には規模(参加する樹種や個体の割合)の違いがあり、樹種による一斉開花への参加頻度に違いがあること、数ヶ月におよぶ開花では群集中での開花順序が樹種によってほぼ決まっていることが見えてきたものの、この理由はまだ解明されていない。また、定着後の実生死亡要因の中では立枯れによる枯死が多く、乾燥ストレスと合わせて病害菌への感染が考えられるうえ、実生動態の予備調査では、花粉散布距離が長いほど実生生残率が低下するという興味深い結果が得られており、今後の展開が期待される。