拠点リーダー挨拶
計画の概要
成果の概要
高精度環境変動解析グループ
変動機構解明グループ
統合モデリンググループ
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「持続する志」としてのSELIS-COE

1. 五年を振り返って
とうとう5年目も終わりになってしまいました。あっという間でしたが、このSELIS-COE(21世紀COEプログラム「太陽・地球・生命圏相互作用系の変動学」)の5年間は、私にとって、新たなチャレンジでもあり、またさまざまな分野とさまざまな階層・世代の人たちとの楽しい協働の期間でもありました。
COEとして採択された頃、学内外からもCOEの関係者からも、名大地球科学関係者の野合のプログラムではないか、本当にうまくいくのか、という声が多く聞かれました。しかし、拠点リーダーを仰せつかった者として、21世紀の地球の学を見据えた真の意味での協働と連携をしよう、そうでなければ私はリーダーを引き受けないと、申請時の会合で宣言しておりました。日本学術振興会(JSPS)の中間評価や後で述べる外部評価委員会の評価とは別に、この分野間の壁を越えての交流と連携に関しては、私自身の5年間の自己評価は、Sはちと厳しいかもしれないが、まずまず、まあ、A程度の評価にはなるかと考えています。何よりもよかったのは、このCOEの精神に則って、研究・教育の連携を進めてくださったのは、中堅・若手の教員、PD研究員、そして博士課程の院生(DC研究員)諸君でした。
これからの地球の研究・探求は、太陽活動の影響から、地球電磁気・超高層大気圏から、対流圏、そして、大気・水圏・地圏に、生命圏の過程を加えたシームレスな地球システムを、その進化・変化の過程を含めて理解すること、そしてその理解を通して、人間活動の意味、役割、そして地球での人間の地位を考えるということが、地球環境問題の深いところでの解決につながっていくと、私は信じています。足掛け5年間のSELIS-COEを通して、その感をますます深めています。
このような理解には、地球というフィールドの観察・観測、データの解析、そして統合的理解のためのモデリングという方法を、個人あるいはグループとして、統合的に、しかもより発展的に進めていく枠組みとしくみが大切であると考えます。このためには、地球を、部分と丸ごとを同時に考える、あるいは感じ取る柔らかな頭を持つことも大切です。 
このような若い研究者・技術者を育てることは、大学のこれからの使命で現在、ポストCOEのプログラムとして、グローバルCOEプログラムが走り出していますが、SELISの構想の大きさを考えると、このグローバルCOEにも、SELISの更なる発展のかたちを、当然考えるべきでしょう。
現実には、しかし、いろいろと問題山積みの5年間でもありました。5年という時限のプログラムで、SELISの追求する地球学の研究と教育が、十分にできるとはとても思えません。このことを痛切に感じた5年間でもありました。教員も、そして、もっとも研究を担ってくださったPD研究員も、遠大なSELISの構想と、限られた年限で成果を出さねばならない、という制約とのあいだのギャップを感じていたにちがいありません。新しい地球学を、今後どう構築していくことができるかは、このような研究・教育制度の大きな問題への解決も含めて、考えていかねばなりません。

2. 外部評価会の開催
このような状況の中で、これまでの活動の総括を、SELIS-COEを外部から見て、より客観的に評価していただくために、2007年5月28〜30日の間、外部評価会を行いました。評価委員会には、松野太郎(日本学士院会員、東大名誉教授、気候力学)、真鍋淑郎(プリンストン大学客員共同研究員、気候モデリング)、半田暢彦(名古屋大学名誉教授、元名古屋大学大気水圏科学研究所長、水圏化学)、福西 浩(東北大学名誉教授、日本学術振興会北京研究連絡センター長、超高層物理学)およびAn Zhisheng(中国科学院士、前中国科学院地球環境科学研究所長、第4紀地質学)の5人の先生にお願いしました。評価会の2日目には、関係教員に加え、若手研究者、ポスドク研究員、大学院生(DC研究員)にも出席してもらい、評価委員との質疑応答の形式で、自由な討議を様々な話題について行いました。3日間にわたる評価会を通して、評価委員会からは、最終的に、以下のような総合評価をいただきました。

『プログラムの全般的な目的は、科学的に非常に興味深く、意欲的である。また、その地球環境の将来予測への潜在的な応用可能性は重要である。特に、1000年という対象とする予測期間は、多くの他のプロジェクトよりも長い。多くの他のプロジェクトは、人為起源の温室効果ガス(GHG)増加による気候変化の予測(投影)を目的とし、典型的には、予測対象は100年である。実際の最大関心事は、増加後のGHGレベルに対応して長期継続する状態、すなわち、新たな地球環境の状態はどのようなものであるかということである。2℃程度の全球平均温度上昇が予測されるため、GHG濃度の安定した後の新たな状態は、次の地質年代とすべきであり、現在の完新世とは異なる「人新世(Anthropocene)温暖期」と呼ばれる場合もある。そのような将来の状態の予測のためには、生物圏の相互作用を物理的な機構システムに含めることが必須であり、太陽からのエネルギー流入の変動・変化もまた、考慮すべきである(可能であれば、火山活動の変化も考慮すべきである)。1000年という時間において、過去を参照すると、太陽放射の変化によって、約0.5℃の全球平均温度変化が引き起こされ得る。また、1000万年前へと遡る古環境研究は、妥当である。やがて来る温暖期には、太陽放射のパターンが、ある氷期のものと類似するにもかかわらず、二酸化炭素濃度は第四紀においては顕著に高く、温度は、過去のどの間氷期よりも高いと予測される。従って、より広い範囲の外的条件における古環境の調査と理解が必要である。
地球環境に関する複数の分野にまたがる研究は、現在、その重要性が広く認識されており、本プログラム以外にも同様のプログラムがあるが、地球変動研究の構成要素として太陽の可変性を含むのは、国内ではSELISプログラムが唯一のものであり、名古屋大学太陽地球環境研究所(STEL)の存在が強みとなっている。この点が、本プログラムの長所であり、目的の達成には貴重である。 横断セミナー、ワークショップ、および、小規模な共同研究を通じた、異なる研究分野/部局の間での、意思疎通の強化と知見の交換から開始したことは、目標へ向けて、よく熟考された戦略であり、現在までのところ、明らかに成功している。評価会の自由討議において、若手研究者は、以前は異なる研究室の研究者とともに研究を行った経験がなかったが、現在では、隣接する分野の研究者が何をしようとしているのか理解していると述べた。 
いくつかの鍵となる研究領域における研究の推進もまた、限られた予算のもとでは、良好、かつ、妥当なSELIS科学の開始方法であった。SELISの目的、および、参加研究部局において実施されている研究活動という背景との関連性を考慮すると、選択された3領域、すなわち、(1) 東ユーラシアにおける古環境および過去の太陽活動の可変性、(2) SELISにおける変化機構の観測に基づいた解析、(3) 地球環境システムの統合モデリングと太陽活動可変性の影響の全てが適切である。しかしながら、評価会における発表では、背景となる研究との関連性が完全には示されなかった。特に、研究領域(2)は、非常に多くの課題を含み得るものであるため、発表された特定の課題の選択理由が不明確であった。明らかに、研究領域(1)は、SELIS科学の追求へ向けて鍵となるものであり、背景となる研究との繋がりが良好である。研究領域(3)は、本プログラムに特化したプロジェクトであり、実質的に新しいものである。この研究領域は、参加部局において実施される背景となる研究、および、本プログラムで得られた多くの知見の統合を象徴するものである。モデル開発の哲学、あるいは、方針は、(中間的複雑さを持つ地球システムモデル, EMIC, と称されるものと同様に)細部の定量性を調整することによって、可能な限り多くの質の異なるメカニズムを取り込むことであり、「仮説検証」のためにモデルを利用することが意図されている。この方法はSELIS科学に向けて、非常に適した方法である。また、原型となるモデルと予備的な数値実験が評価会で示され、大変興味深いものであった。』
多くの課題を抱えながらも、私たちの進んできた方向性はまちがいなく、21世紀の「地球学」をまさに見据えたものであったと、この外部評価委員会を通して、改めて強く感じた次第です。

3. 地球生命圏研究機構の設置―SELISの継続と発展に向けてー
SELIS-COEの5年間の研究・教育の連携と協力を通して、それぞれの分野の壁を越えた新た研究と教育の取り組みが大きく進んできました。このSELIS-COEの精神にもとづく研究・教育はさらに発展させるべきものであることを、外部評価委員会の評価を通しても、再確認いたしました。特に、地球システムを、太陽活動の影響から、大気・水圏過程に加え、生命圏の役割も含めて、シームレスなシステムとして理解する新たな地球学の研究と教育への枠組みが、全国の大学に先駆けて作られたことは大きな成果であったと自負しています。 
人間活動の拡大による地球環境変化が大問題になっていますが、このような状況の中で、地球変化研究の国際的な枠組みにも、大きな動きが起こっています。そのひとつが、いくつかの国際研究計画の統合と連携の動きです。すなわち、物理・化学的な地球気候システムの研究を進めている世界気候研究計画(WorlDClimate Research Programme: WCRP)と、生命圏と地球システムの相互作用を通した地球変化研究を進める地球圏−生物圏国際協同研究計画(International Geosphere-Biosphere Programme: IGBP)、地球の生物多様性の進化、構成、機能、維持および保全に関する研究を進める生物多様性研究計画(International Programme for Biodiversity Science: DIVERSITAS)に加え、地球環境変化の人間社会側面に関する国際研究を進める人間次元計画(International Human Dimension Programme: IHDP)が連携して、地球システムの統合的研究を、 Earth System Sciences Partnership(ESSP)として進めようとしています。この中でも、特に、WCRPとIGBPの連携・協力は、現在の地球環境変化研究における喫緊の課題として、研究者間での国際的な議論が進んでいます。ただし、1世紀以上にわたり、異分野同士だった研究のコミュニティの対話と連携は、そう簡単ではありません。私たちがSELIS-COEで進めてきた新たな枠組みは、まさにこのような広い地球科学分野間、および地球科学と生態学を中心とする生命圏科学の緊密な連携・協力を実質的に研究と教育面で開始しているという意味では、このような国際的な動向を、むしろ先取りした枠組みともいえます。
このようなSELIS-COEで培われた研究・教育の枠組みは、今後、生命農学研究科などの関連組織と教員の参加も含め、COEプログラム終了後も、引き続き継続・発展させ、学内でのより永続的な研究・教育のための組織体制へと発展させることも必要です。幸い、そのための学内での枠組みを、関連組織、部局の協力で設置することで、学内の同意が得られました。それが、地球生命圏研究機構です。この機構は、SELIS-COEを更に発展・拡充させるために暫定的に設立される学内連携のためのバーチャル型の研究機構として立ち上げ、若手研究者の育成も視野に入れた連携研究の学内での拠点として位置づけています。
さらに、この新たな研究機構と、環境学研究科、生命農学研究科、理学研究科などの教育組織が組むことにより、JSPSで始められているグローバルCOEプログラムへの申請の準備も進められています。

4. 終わりと、および新たな始まりにあたって
上記のように、このSELIS-CCE最終報告書の巻頭言は、同時に、SELISの永続宣言、あるいは、「持続する志」の宣言になってしまったようです。学内外の関係教員、研究員、学生諸君の熱い志をぜひ持続させるべく、私も微力を尽くしたいと思います。
しかし、SELIS-COEがここまで到達できたのは、関係教員の熱い志と努力だけでなく、PD研究員や、DC研究員(博士課程大学院生)の積極的なコミットによる成果と考えています。さらに、SELIS-COEで行われてきた数多くの研究・教育活動の推進のために献身的に働いてくださったCOE支援室の技術・事務補佐員の方々の役割も大変大きかったと感じています。最終報告書の冒頭にあたり、これらの関係されたすべての方々に、改めて、深く感謝する次第です。

平成19年度実績報告書より
安成哲三(拠点リーダー)
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